タイミーの事業戦略と採用戦略を見て、率直に思いました。 これは強すぎる。悔しいくらい、よくできている。
僕は22歳でリクステップをやっています。 だから、同じ20代でここまでの会社を作っている小川嶺さんを見ると、普通に嫉妬します。 すごいな、だけでは終われない。 うらやましいし、悔しいし、でも同時に、事業を作る人間としてめちゃくちゃ燃える。
ただの感情論で終わらせるつもりはありません。 タイミーがなぜ強いのかを分解すると、リクステップがこれから作るべき会社の輪郭もかなり見えてきます。 タイミーは「スキマバイトアプリ」を作ったのではなく、働く入口、信頼の作り方、採用の前提を作り替えた会社です。
タイミーは「人手不足」を解いたのではなく、「時間のミスマッチ」を解いた
タイミーのすごさは、人手不足という大きな社会課題をそのまま真正面から解いたことではありません。 人手不足を、もっと小さく、もっと扱える問題に分解したことです。
世の中には、丸一日働けるわけではないけれど、数時間なら働ける人がいます。 学生、主婦・主夫、副業希望者、転職期間中の人、生活リズムに合わせて働きたい人。 一方で企業側にも、フルタイムで採用するほどではないけれど、今日のこの時間だけ、明日のこの作業だけ、どうしても人が足りない瞬間があります。
つまり、問題は単純な労働力不足ではありません。 働き手の空き時間と、企業側の必要時間がうまく接続されていなかった。 タイミーは、そのミスマッチをプロダクトでほどいた。 ここが本当に強い。
登録ワーカー数
1,420万人超
働きたい人の母集団を大きく押さえ、短時間労働の供給を市場化している。
登録事業所数
46.5万拠点超
人手不足の現場だけでなく、店舗・物流・飲食・介護など多様な現場に入り込む。
稼働率
約86〜87%
募集を出して終わりではなく、実際に人が埋まる市場として機能している。
リピートワーカー比率
65%
一度きりのマッチングではなく、信頼と評価が次の稼働を生む循環がある。
数値は2026年4月期の公開資料をもとにした概数です。決算期変更により、2026年4月期は6ヶ月の変則決算です。
履歴書と面接の前に、実績で信頼を作る
採用の世界は、ずっと「事前に信頼する」仕組みでした。 履歴書を見る。面接する。経験を聞く。人柄を判断する。 もちろん今でも大事です。 ただ、短時間・即日・現場業務の世界では、このプロセスが重すぎる。
タイミーは、ここを逆転させています。 事前の言葉だけで信頼するのではなく、働いた履歴、相互評価、キャンセル、遅刻、リピートの実績で信頼を作る。 これは単なるマッチングアプリのUX改善ではありません。 労働市場における信用情報の作り方を変えている。
タイミーが作っているのは、求人票の流通ではなく、働いた事実が次の機会につながる信頼の台帳です。
ここが強い理由は、使われるほどデータが増えるからです。 ワーカーが増える。求人が増える。稼働が増える。評価が増える。企業はより埋まりやすくなり、働き手はより選びやすくなる。 そして、良い体験をした人ほど戻ってくる。 これはプロダクトの機能ではなく、ネットワークそのものが強くなる構造です。
営業組織が強い理由は、売っているものが広告枠ではないから
タイミーの営業組織にも、かなり学ぶところがあります。 もしタイミーが単なる求人広告の会社なら、営業は掲載枠を売る仕事になります。 でも実際にはそうではない。 営業がやっているのは、顧客の現場業務を分解し、どの仕事なら短時間で切り出せるかを一緒に設計することです。
物流倉庫であれば、どの工程なら初回でも入れるのか。 飲食店であれば、何を事前に伝えれば当日迷わないのか。 介護や小売であれば、どこまで任せ、どこから社員が見るべきなのか。 こうした設計ができないと、求人は出ても埋まらないし、埋まってもリピートされません。
つまり営業は、単に売上を作る部隊ではなく、プロダクトが現場で機能するための変換装置です。 顧客の業務を理解し、求人の出し方を整え、初回稼働の失敗を減らし、リピートが生まれる状態を作る。 ここまでできるから、タイミーはアプリだけではなく事業として強い。
採用戦略が、事業戦略そのものになっている
タイミーを見ていてもう一つ強く感じるのは、採用戦略が事業戦略と切り離されていないことです。 急成長企業は、ただ人を増やせばいいわけではありません。 増やした人が、同じ判断基準で、同じ方向を向いて、顧客価値に向かえる状態を作らないと、組織はすぐに重くなります。
タイミーの価値観には、自分ごと化すること、理想から考えること、まずやっていくこと、周囲を加速させることが入っています。 これはきれいな言葉を並べたカルチャーではなく、事業の性質から逆算された採用要件に見えます。 現場の複雑さを理解し、理想から業務を作り替え、速く動き、周囲を巻き込める人でなければ、この事業は伸ばせない。
強い採用とは、優秀そうな人を集めることではありません。 事業の勝ち筋を理解し、その勝ち筋に必要な行動を増やせる人を採ることです。 タイミーはここがかなり一貫しているように見えます。
僕が嫉妬しているのは、規模ではなく「入口を変えたこと」
正直、売上や利益の規模だけを見て嫉妬しているわけではありません。 もちろん数字もすごい。 2025年10月期の売上高は342億円を超え、営業利益も67億円を超えています。 2026年4月期は決算期変更による6ヶ月の変則決算ですが、それでも売上高210億円、営業利益38億円規模です。
でも、もっと悔しいのはそこではない。 タイミーは、働く入口を変えた。 面接して、履歴書を見て、シフトを組んで、採用して、ようやく働くという流れを、もっと短く、もっと実績ベースに変えた。 その結果、今まで労働市場に出てこなかった時間が、社会の中で使える資産になった。
これはリクステップがやりたいことにも近い。 僕たちは、申請、確認、承認、差し戻し、記録、通知、分析といった業務の入口を変えたい。 人が毎回頑張って埋めている摩擦を、仕組みに変えたい。 そして、業務の中で生まれる判断やログを、会社の資産にしたい。
| 論点 | リクステップ視点での読み |
|---|---|
| タイミーが変えた入口 | 働く前の面接、履歴書、採用判断、シフト調整を、実績ベースのマッチングへ寄せた。 |
| リクステップが変える入口 | 申請、確認、承認、差し戻し、記録、通知を、業務ログが残るステップ型の基盤へ変える。 |
| 共通する思想 | 人が頑張って埋めていた摩擦を、仕組みとして再設計し、使われるほど信頼と知見が蓄積される状態にする。 |
ステップシリーズで作りたいのは、業務の「通り道」
リクステップが進めているステップシリーズも、単に機能を増やす開発ではありません。 申請ステップ、確認ステップ、承認ステップ、差し戻しステップ、通知ステップ。 業務の中にある通り道を整理し、誰が、何を、どの順番で判断し、どこで止まり、何が次に渡るのかを明確にする。
ここが整理されると、ただ便利になるだけではありません。 業務ログが残ります。 判断基準が残ります。 差し戻し理由が残ります。 顧客が迷ったポイントが残ります。 そして、そのデータは次の改善、次の提案、次のAI活用につながります。
タイミーが働いた履歴を信頼に変えたように、リクステップは業務の履歴を会社の知見に変えたい。 これが僕たちの勝ち筋です。
速く作るだけでは、絶対に勝てない
AIで開発速度は上がっています。 だからこそ、速く作れること自体の価値は下がっています。 これから大事なのは、何を作らないか、何を共通化するか、どこに業務ログを残すか、どの判断を人間に残すかです。
タイミーが強いのは、アプリを作ったからではありません。 働く前提を変え、現場の業務を分解し、信頼のデータを蓄積し、営業と採用まで一体で伸ばしているからです。 事業全体が一つのループになっている。
リクステップも同じです。 画面を作る会社、機能を作る会社、AIを入れる会社では足りない。 業務の流れを作り替え、使われるほど知見が残り、企業の意思決定が強くなる会社にしなければならない。
小川さんには嫉妬している。でも、負けるつもりはない
同じ20代で、ここまで社会の前提を変える会社を作っている小川さんには、正直嫉妬します。 でも、その嫉妬は悪いものではありません。 自分もそこまで行きたい、自分も社会の入口を変える会社を作りたい、という感情です。
タイミーが働く入口を変えたなら、リクステップは業務の入口を変える。 タイミーが働いた実績を信頼に変えたなら、リクステップは業務ログを企業の知見に変える。 タイミーが採用と事業戦略を一体化させたなら、リクステップも開発、営業、採用、AI活用を一体で伸ばす。
すごい会社を見て、すごいですねで終わるのは悔しい。 僕はリクステップを、そういう会社にしたい。 若いから無理ではなく、若いからこそ、前提を疑って、速く動いて、負けない会社を作る。
まとめ
タイミーの強さは、スキマバイトという分かりやすい言葉だけでは説明できません。 本質は、時間のミスマッチを解き、働いた履歴を信頼に変え、営業と採用まで含めて事業のループを設計していることです。
リクステップが学ぶべきなのは、表面的なプロダクトや成長率ではありません。 社会の中にある摩擦を見つけ、それを仕組みに変え、使われるほど価値が蓄積される構造を作ることです。
嫉妬した。悔しい。でも、負けない。 リクステップは、業務の入口を変える会社になります。

Author
柴 悠介
株式会社リクステップ CEO / K-Drive株式会社 CTO(最高技術責任者)。シリコンバレーでAI開発エンジニアとして従事した後、日本に帰国。健康経営×AIの領域で、5,174社以上のサポートを支えるシステム基盤の設計・開発を主導。
