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株式会社リクステップ 採用支援チーム
マイナビの公開調査をもとに、中途採用における条件提示と情報発信の工夫を整理しています。調査で確認できる事実と、リクステップとしての実務上の提案を分けて解説します。
求人票に年収を記載していても、候補者にはまだ分からないことがあります。入社後に給与はどう変わるのか。何をすれば評価されるのか。今より生活に余裕を持てるのか。こうした疑問に答えることも、採用時の条件提示の一部です。
マイナビが2026年9月24日に公表した調査では、直近1年間に転職活動をした正社員の68.6%が、年収の下がる転職を受け入れにくいと回答しました。一方、希望額に届かなくても、将来の収入や働き方を条件に転職を検討する回答も見られます。
数値の出典:マイナビ「転職活動実態調査(2026年)」。対象は転職済みの人を含む1,500人です。以下では、この結果を採用実務にどう生かせるかを考えます。
168.6%が年収低下に難色。調査から見える期待
68.6%は、年収が下がる転職に対して、強い拒否感を示した回答29.3%と、やや否定的な回答39.3%を合わせた数字です。全員が、あらゆる条件のもとで年収低下を拒否しているという意味ではありません。
| 対象 | 年収低下を受け入れにくい割合 | 回答者数 |
|---|---|---|
| 全体 | 68.6% | 1,500人 |
| 20代 | 73.4% | 383人 |
| 30代 | 71.9% | 477人 |
出典:同調査・図4。20代・30代の割合は、図に記載された否定的な2回答の割合を合計。
また、転職時に現実的に期待していた年収の上昇幅は、5%以上〜10%未満が33.2%で最多でした。これは転職前後の年収差への期待であり、入社後に毎年求める昇給率ではありません。
たとえば現年収400万円なら、5%以上〜10%未満の増加は420万円以上440万円未満です。これは計算例ですが、企業が「少し上乗せした」と考えている提示額でも、候補者の期待とは差がある可能性を具体的に捉えられます。まずは、募集する役割に対して設定している給与と、候補者の希望額を確認することが出発点になります。
2希望年収に届かなくても、検討の余地はある
希望年収を満たさない場合に転職を考える条件では、次の2項目が上位になりました。
| 希望年収に満たない場合の検討条件 | 回答割合 |
|---|---|
| 将来的な収入増加が見込める | 47.6% |
| 労働時間・働き方が改善する | 44.5% |
出典:同調査・図6(全体1,500人)。各条件への回答割合であり、実際の内定承諾率や転職の実現率ではありません。
ここで押さえたいのが、希望年収に届かないことと、現年収を下回ることの違いです。現年収400万円、希望年収450万円の人に420万円を提示した場合、希望額には届きませんが、現年収からは上がっています。47.6%という数値を、そのまま「将来の昇給を示せば年収ダウンを受け入れる割合」と読むことはできません。
採用側への示唆は、提示額の説明を将来の見通しまで広げることです。候補者は、入社時の金額を確認したうえで、その会社で収入や働き方がどう変わり得るかも検討材料にしています。希望額との差があるなら、その差を把握したうえで、本人が重視する条件について話し合う余地があります。
3採用時に伝えたい、将来価値の4つの要素
調査結果を踏まえ、リクステップでは、将来の見通しを次の4つに分けて整理することを提案します。昇給の見通しを評価の条件で裏付け、その先の役割と、日々の働き方までつなげて説明します。
昇給カーブ:いつ、どの条件で収入が変わるのか
「昇給あり」という記載だけでは、収入の見通しは立てにくいものです。給与を見直す時期、等級ごとの年収レンジ、役割の変化に伴う昇給の扱いを示します。過去の実績を使う場合は、対象の職種・等級・集計期間をそろえ、どれくらいの人に当てはまる事例なのかも添えましょう。
年収例を一人だけ紹介すると、その人と同じ昇給が期待できるように見えることがあります。基本給・賞与・手当の内訳、必要な評価や役割、業績による変動も示すと、候補者は自分の場合に置き換えて考えられます。
評価制度:何ができれば、次の給与に届くのか
昇給額に納得するには、その決まり方を理解できる必要があります。成果・専門スキル・チームへの貢献のうち何を評価するのか、誰が評価し、本人への説明や振り返りをいつ行うのかを伝えます。
営業職であれば、売上に加えて継続受注や顧客対応も評価するのか。技術職であれば、専門性の向上や後輩の育成をどう扱うのか。実際の仕事に沿った例があると、候補者は入社後に期待される行動を理解しやすくなります。制度が未整備なら、現在の判断基準と今後整える予定を分けて説明します。
キャリアパス:次に担う役割と、そこに至る道筋
「成長できる環境」という言葉を、任せる仕事と支援の内容に置き換えてみましょう。入社時に担当する業務、独り立ちの目安、次の等級で期待する役割、研修や上司の支援をつなげると、成長の過程が見えてきます。
管理職への昇進以外に、専門職として処遇を上げる道があるかも伝えたい点です。ポストの空きや事業の状況に左右されるものは、その条件まで説明します。本人が希望する方向と会社が用意できる役割を照らし合わせることが、期待のずれを見つける助けになります。
働き方:制度を使った先の、日常の姿
働き方の改善を重視する候補者には、残業時間、休日、勤務場所、通勤、シフトの決まり方などが検討材料になります。会社全体の平均に加えて、配属予定部署や繁忙期の実態も確認できると、入社後の生活を想像しやすくなります。
たとえば在宅勤務なら、利用できる職種・頻度・試用期間中の扱いまで説明します。柔軟な勤務制度があっても、今回の募集職種で利用できなければ、その候補者にとっての改善にはつながりません。使える条件と実際の利用状況をセットで示すことが大切です。
4求人票と面談の説明を、ここまで具体化する
求人票では比較に必要な情報を簡潔に示し、採用サイトや面談で根拠を補います。次の表は、説明を具体化するための整理例です。各社の制度・実績を確認したうえで、自社に当てはまる情報に置き換えてください。
| よくある記載 | 追加して伝えたい情報 |
|---|---|
| 年収400万円〜 | 基本給・賞与・手当の内訳、変動する部分、初年度の賞与算定、残業代の扱い |
| 昇給あり | 給与改定の時期、等級別レンジ、昇給の条件、対象を明示した過去の実績 |
| 頑張りを評価 | 評価項目、評価者、面談の頻度、評価が給与や役割に反映される仕組み |
| キャリアアップ可能 | 次の役割、昇格の条件、専門職の道、研修・育成の支援内容 |
| 働きやすい職場 | 配属部署の残業実態、休日・シフト、柔軟な勤務制度の利用条件 |
面談では、希望年収の理由も確認したいところです。毎月の収入を安定させたいのか、経験に見合う評価を得たいのか、長時間労働を減らしたいのか。同じ希望額でも、優先していることは人によって異なります。年代別の傾向は参考にしつつ、本人の事情を聞いて説明を組み立てます。
5期待のすり合わせを、入社後までつなげる
採用担当者、面接官、配属先の上司で説明が異なると、候補者はどの情報を基準に判断すればよいか迷います。給与レンジや評価基準を一つの資料にまとめ、内定時には、確定している条件と、実績をもとにした見通しを分けて確認しましょう。
入社後も、最初の評価面談などで採用時の説明とのずれを確かめます。内定辞退や入社後の面談で出た声を、給与水準・仕事内容・働き方・説明の不足に分けて振り返れば、次の募集で直すべき点を見つけやすくなります。
今回の調査は、こうした説明によって採用ミスマッチが何%減るかを検証したものではありません。それでも、候補者が判断材料として挙げた将来の収入と働き方について、具体的な情報を渡す意義は読み取れます。
採用競争で伝えるべき価値は、初年度年収から、その会社で働き続けた先の見通しへも広がっています。昇給カーブ、評価制度、キャリアパス、働き方。その実態と条件を説明できることが、候補者が納得して選ぶための土台になります。自社の制度を確かめ、説明できる形に整えるところから始めてみてください。
6出典・調査概要
マイナビ キャリアリサーチLab「転職活動実態調査(2026年)」(2026年9月24日公開)。本記事は図3・図4・図6を参照しています。
- 調査方法
- 外部パネルを利用したインターネット調査
- 調査対象
- 正社員として働く20〜50代の男女で、2025年7月〜2026年6月に転職活動をした1,500人
- 対象者の内訳
- 直近1年以内に転職した人500人、転職活動をしたが転職していない人1,000人
- 本調査の期間
- 2026年7月8日〜7月15日
数値は公表値に基づきます。端数処理によって合計が一致しない場合があります。調査の対象範囲に留意し、すべての求職者に同じ希望や条件が当てはまるとは扱わないでください。
自社の魅力を、候補者が判断できる情報へ
給与・仕事内容・働き方の整理から、求人票や採用サイトでの伝え方まで。採用活動の見直しについて、リクステップへご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
昇給制度があれば、低い年収でも採用できますか?
この調査だけでそう判断することはできません。希望年収に届かなくても将来の収入増加を検討材料にする人はいますが、年収低下への抵抗感も示されています。募集する職種・役割に見合う給与水準を確認したうえで、昇給の条件と実績を説明する必要があります。
最多だった「5%以上〜10%未満」は、毎年の昇給率ですか?
いいえ。転職する場合に現実的に期待していた年収の上昇幅です。入社後の毎年の昇給率や、実際に実現した年収増加率を示す数値ではありません。
まだ評価制度が整っていない企業は、何を伝えればよいですか?
現在の給与の決め方、見直しの時期、判断する人、役割が変わったときの扱いを整理して伝えます。制度改定を予定している場合は、運用中の仕組みと今後の計画を分けて説明してください。未確定の昇給や昇格を約束しないことが大切です。
