健康経営 / 補助金・助成金

健康経営を、
補助金・融資・採用につなげる。

認定を取って終わらせない。人を大切にする取り組みを、
会社の投資余力と、選ばれる理由に変えていく。

 著者:柴 悠介

健康経営を考える企業の取り組み
この記事の目次

健康経営の話をすると、「福利厚生を充実させることですか」と聞かれることがあります。もちろん、従業員が健康に働ける環境を整えることが出発点です。ただ、経営者として考えたいのは、その取り組みを社内だけで完結させず、事業の継続や成長につなげることです。

健康経営優良法人の認定は、一部の補助金での評価や融資制度、採用時の情報発信にも関わります。健康への投資と事業への投資を別々に考えるのではなく、同じ経営計画の中で整理する。その視点を持つと、認定の使い方が変わります。

制度情報の確認日:2026年9月18日。募集終了や公募条件の変更があるため、申請時は各制度の公式案内をご確認ください。

01健康経営の価値は、認定後の使い方で変わる

私は、認定を取得することと、それを経営に活かすことは一続きであるべきだと考えています。認定証をホームページに掲載していても、設備投資の担当者や採用担当者がその活用方法を知らなければ、せっかく整えた取り組みが社内で分断されてしまいます。

一つの取り組みを、三つの経営接点へ
従業員の健康を支える運用課題把握 → 実施 → 記録 → 改善
事業投資対象制度の審査加点を確認
資金調達融資の優遇条件を確認
採用・定着取り組みを具体的に伝える

ただし、この図は認定すれば三つの成果が自動的に手に入るという意味ではありません。各制度の条件に合うこと、必要な手続きを行うこと、日常の取り組みが実態として続いていることが前提です。認定は、その実態を社外に説明するための接点の一つになります。国のインセンティブの全体像は、ACTION!健康経営の公式案内でも整理されています。

02「加点」「優遇」「申請要件」を混同しない

補助金を探すときに最初に分けたいのが、この三つです。「健康経営が対象」という一言だけでは、その制度でどのような扱いになるかは分かりません。見るべき書類も、経営への影響も異なります。

制度を読むときの三つの区分
区分意味確認すること
審査の加点審査でプラスに評価される項目対象認定の年度、判定日、証明資料
条件の優遇利率などの条件が変わる仕組み対象資金、認定区分、適用範囲
申請の要件申請するために満たす条件地域、規模、業種、実施事業、経費

加点があっても、投資内容が制度の目的と違えば申請の土台がありません。逆に、認定がなくても申請できる制度はあります。まず「自社が何を実現したいか」と「制度が何を支援するか」を合わせ、その後に認定をどう使えるかを確認する順番が合理的です。

また、「健康経営に取り組んでいる」「認定を申請している」「特定年度の認定を受けている」は別の状態です。締切時点の認定を求められる制度で、将来取得する予定を記載しても、その条件を満たしたことにはなりません。

03毎年の投資計画に、健康経営の加点を組み込む

健康経営の認定は、一度の補助金申請だけで使い切るものではありません。年度や公募回を重ねて実施されている補助金には、健康経営優良法人の認定を審査で評価するものがあります。認定を継続し、設備投資やIT導入の計画と結びつけることで、次の申請でも加点の活用を検討できます。

継続して確認したい、健康経営の加点がある補助金
制度投資の用途確認できる加点と注意点
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)業務用ソフトウェアなどのITツール導入2026年の公式案内では健康経営優良法人2026を加点対象に掲載。通常枠、インボイス枠の対応類型・電子取引類型、セキュリティ対策推進枠が対象です。公式の加点条件
ものづくり補助金革新的な製品・サービス開発に伴う設備投資など複数の公募回で健康経営優良法人認定の加点が設けられています。23次公募の概要版では健康経営優良法人2025が対象。次回も同じ認定年度でよいとは限らないため、申請する回の要領で確認します。公式の公募要領
中小企業新事業進出補助金既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出公式の審査概要に健康経営優良法人加点を掲載。対象の認定年度と判定時点は、申請する公募回の要領・応募申請ガイドで確認します。公式の審査概要

この表は加点制度の紹介であり、各補助金が現在受付中であることを示すものではありません。次年度の公募実施や加点の継続も保証されていません。

毎年使える可能性を、毎年受給できる権利と混同しない

大切なのは、「一度認定されれば永久に加点される」という理解ではなく、その年度の認定を維持し、申請先の条件に合わせて活用することです。補助金によって求める認定年度が異なるため、認定証と有効期間、申請締切、必要な証明資料をセットで管理します。

例えば、今年は会計や受発注のIT化、翌年は新サービスの設備投資を検討する会社なら、それぞれの投資計画に合わせて加点条件を確認できます。ただし、同じ会社が再度申請できるか、過去の採択が審査にどう影響するか、同じ経費への重複補助が認められるかは別の論点です。認定の継続と補助金の再申請可否は分けて判断する必要があります。

リクステップが重視するのは、締切直前に加点を探す運用から、毎年の経営計画に組み込む運用へ変えることです。健康づくりの実施記録を残し、認定の申請時期を把握し、投資案件が生まれたときに条件を照合する。健康経営を続けることが、将来の投資に備える会社の基盤にもなります。

個別の募集情報も、投資目的に合わせて確認する

以下は、健康経営とあわせて事業投資を考える際に確認したい制度です。すべてを健康経営の加点対象としてまとめた一覧ではありません。確認できた公募情報と、加点の確認状況を分けて掲載しています。

01 / 東京都9月30日16時まで

事業承継を契機とした成長支援事業(一般コース)

令和8年度第2回。助成限度額800万円、原則として対象経費の3分の2以内。事業承継後の新規事業展開を支援する制度であり、認定だけで対象になるものではありません。健康経営の加点は本記事では確認できていません。

公式の公募情報を確認
02 / 福岡県宗像市12月25日まで・予算終了あり

宗像市がんばる中小企業者応援補助金

市内事業者の新事業、販路開拓、生産性向上等を支援。先着順で予算上限到達時に終了します。補助率・上限は対象事業ごとに確認が必要で、健康経営の加点は本記事では確認できていません。

公式の公募情報を確認

申請前に、対象経費と受付状況を確認する

上限額にも同じ注意が必要です。大きく表示される最大額が、自社の従業員数や申請枠に当てはまるとは限りません。公募回、対象枠、補助率、対象経費、加点条件を一組で確認する。ここまで確認して初めて、投資計画の数字として使えます。

予算に達した時点で受付を締め切る制度では、予定の締切日より前に募集が終わることがあります。見積取得や社内決裁の前に受付状況を再確認し、申請に必要な準備を早めに進めましょう。

04融資では、認定区分と最新の利率を確認する

補助金は対象経費の一部を支援する制度ですが、融資は返済を前提に必要な資金を調達する仕組みです。健康経営による優遇があるからといって、この違いがなくなるわけではありません。設備代金をいつ支払い、売上や補助金がいつ入るかという資金繰りの中で考える必要があります。

日本政策金融公庫の働き方改革推進支援資金の2026年5月版案内では、有効な健康経営優良法人の認定を受けている場合は特別利率①、ホワイト500・ブライト500・ネクストブライト1000の認定では特別利率②と案内されています。具体的な適用範囲は、利用する事業区分や資金の条件を含めて公庫に確認します。

一方で、過去の紹介資料にある「1.35%」「1.10%」という数字を、そのまま現在の借入金利として扱うのは適切ではありません。利率は時点や借入条件で変わります。公庫の制度ページと相談窓口で、金額、返済期間、資金使途を伝えたうえで確認することが必要です。

金利の差は、借入残高と期間で考える

考え方をつかむための単純な例として、借入残高が1,000万円で一定なら、年0.2ポイントの利率差は年間約2万円の差です。実際には返済で残高が減り、条件も変わります。これは現在の優遇幅や融資見積りではなく、金利だけを見ずに資金計画全体で比較するための計算例です。

05採用で伝えるのは、ロゴの先にある働き方

ハローワークのPRロゴ案内には、健康経営優良法人の認定マークが掲載されています。求人票や求人情報画面で認定を伝える接点になりますが、それだけで応募が増えると約束できるものではありません。

求職者が知りたいのは、その職場で自分がどのように働けるかです。健診を受けやすい勤務調整をしているのか、体調の変化を相談できるのか、長時間労働を減らすために何を変えたのか。認定とあわせて、実施している内容を具体的に伝えることが大切です。実態以上の効果を盛る必要はありません。

外国人雇用の手続きは、対象となる申請ごとに確認する

ACTION!健康経営の国の取り組みでは、一定の在留資格に関わる提出資料のカテゴリー1として、健康経営優良法人の認定による手続き簡素化が紹介されています。ただし、すべての在留資格・手続きで一律に書類が省略されるわけではありません。

採用する人の職務内容や申請区分に応じて、出入国在留管理庁の最新の提出書類案内を確認します。認定があっても、在留資格の許可や在留期間が自動的に保証されるものではありません。会社側の説明資料を整えやすくする接点として、採用計画と一緒に整理するのが実務的です。

06補助金の締切からではなく、会社の計画から逆算する

「使える補助金が見つかったから、今から認定を取ろう」という進め方では、時期が合わないことがあります。認定には年度ごとの手続きがあり、取り組みや記録の準備も必要です。投資する直前に認定だけを用意するのではなく、来期の事業計画と健康経営の年間計画を重ねておくことが大切です。

  1. 事業課題を決める

    人手不足、残業、採用、設備更新など、何を変えるための投資なのかを言語化します。

  2. 取り組みと証拠を整理する

    健診の受診状況、周知・研修の記録、改善計画、担当者を確認。申請のためだけに記録を作り直さない運用を考えます。

  3. 制度とスケジュールを合わせる

    認定年度、判定日、公募回、経費の対象期間、必要なIDや書類を一つの予定表に並べます。

  4. 実施後の運用まで決める

    報告や証憑の保存、認定の更新、取り組みの振り返りを、誰がいつ行うかまで明確にします。

健康に関する情報を扱う際には、誰でも個人の詳しい情報を見られる状態にしないことも大切です。経営判断に必要な集計と個人情報の管理を分け、担当者と閲覧範囲を決める。記録が増えるほど、保存方法と権限の設計が運用の品質を左右します。

07リクステップが考える、認定を取った後の仕組み

健康経営の担当者、補助金の担当者、採用の担当者が、それぞれ同じ会社の情報を別々に集め直している。この状態はもったいないと感じます。従業員数や組織情報、取り組みの実施日、社内で決めた方針など、共通して使える情報は少なくありません。

リクステップとして重視したいのは、こうした情報を使える形で蓄積することです。担当者が替わっても、何を実施し、どこに証拠があり、次に何を確認するのかが分かる。採用サイトを更新するときにも、制度の申請を検討するときにも、その蓄積を使える状態を目指します。

そのために、最初から大きなシステムを導入する必要はありません。まずは担当・期限・記録の置き場を揃える。入力の重複や確認待ちが増えてきたら、業務システムや自動化で支える。制度に合わせて会社を無理に変えるより、会社が続けられる取り組みを整え、それを適切な制度につなげていくほうが、長く価値が残ります。

健康経営の認定を、会社の実態を伝える入口にする。
その先の投資・資金調達・採用まで、経営としてつなげて考える。

認定はゴールの一つですが、取り組みの終わりではありません。人が安心して働ける環境をつくり、その事実を記録し、事業の選択肢を増やしていく。その循環を回せる会社づくりに、健康経営を活かしていきたいと考えています。

08よくある質問

健康経営優良法人に認定されると補助金は必ず採択されますか?

いいえ。加点対象となる制度でも、対象事業者・経費・事業計画などの要件と審査があります。認定の有無と、申請資格・採択・交付決定は別のものです。

健康経営に取り組んでいれば、認定前でも加点されますか?

制度によります。特定年度の認定を求める場合、活動中や申請中であることだけでは代わりになりません。対象となる認定、判定日、提出資料を該当公募の要領で確認します。

融資の優遇金利は1.35%や1.10%で固定ですか?

固定ではありません。過去の紹介資料の数値を現在の適用金利として扱うことはできません。日本政策金融公庫の最新の利率と借入条件に基づき確認します。

認定をこれから目指す会社は何から始めればよいですか?

自社の健康課題、既存の取り組み、担当者、保存している実施記録を整理します。そのうえで認定スケジュールと投資・採用の計画を合わせ、不足している取り組みを継続できる運用に落とし込みます。

柴 悠介

著者:柴 悠介

株式会社リクステップ 代表取締役。企業のWeb制作・システム開発・採用支援を通じて、事業と現場の課題解決に取り組んでいます。

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